会社を設立し、経営者となったあなたが日々の支払いで直面する最大の疑問。
「これって、会社の経費で落としていいの?」
「仕事で着るスーツだから経費だよね?」
「カフェで仕事をしたからコーヒー代はOK?」
「取引先と一緒なら、高級クラブも交際費?」
世の中には「社長になれば何でも経費にできる」という甘い噂が飛び交っていますが、それを真に受けると税務調査で痛い目を見ます。税務署は、あなたの領収書一枚一枚を、「法人税法」という厳格なモノサシでチェックしているからです。
しかし、逆に「怖くて何も経費にできない」のも間違いです。本来経費にできるものを計上しないのは、会社のお金を捨てて、無駄な税金を払っているのと同じだからです。
重要なのは、「○か×か」という感覚論ではなく、「どの法律・通達に基づいて経費と言えるのか」という法的ロジックを持っているかどうかです。
この記事では、グレーゾーンになりがちな「飲み代」「スーツ」「カフェ代」「高級車」などについて、法人税法22条、租税特別措置法、そして実際の過去の判例に基づいた、プロの税理士が用いる「判断基準」を公開します。
さらに、多くの社長が関心を持つ「福利厚生(ジム・旅行)」や「自宅兼事務所の家賃」の境界線、そして税務調査で否認されそうになった時の「反論ロジック」まで、網羅的に解説します。
これを読めば、あなたはもう領収書の前で迷うことはなくなります。税務調査官に対して「法的根拠」を持って説明できる、本物の経営者としての知識を身につけましょう。
第1章:税務署はここを見ている!経費認定の「法的3要件」
個別の事例に入る前に、全ての経費判断の根幹となる法律上のルールを理解してください。税務署が「否認(=経費じゃないと判断)」するのは、以下の法的要件を満たしていない時です。
要件1:【事業関連性】売上獲得のために直接必要だったか?
根拠:法人税法第22条第3項(損金の額の計算)
法人税法では、経費(損金)として認められるものを「当該事業年度の収益に係る売上原価」および「販売費、一般管理費その他の費用」と定めています。
つまり、その支出が「会社の売上を獲得するために直接的に貢献したか」が問われます。単に「仕事に関係しそう」では不十分です。
「取引先との会食」は、関係構築を通じて将来の売上につながるため事業関連性があります。一方、「友人との飲み会」や「社長個人の趣味」は、売上への貢献が証明できないため、同条項に基づき否認されます。
要件2:【家事関連費の区分】プライベートと明確に分けられるか?
根拠:法人税基本通達9-7-15(役員等の損害賠償金等)の準用概念
自宅兼事務所の家賃や、カフェ代など、仕事とプライベートの両方に関わる費用を「家事関連費」と呼びます(※厳密には所得税法上の概念ですが、法人税実務でも同様の判断基準が用いられます)。
これらは原則として経費になりませんが、「業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分」に限り、経費として認められます。
「なんとなく半分」という按分は通用しません。「使用面積」や「使用時間」など、客観的な数値基準で明確に区分できることが必須条件です。
要件3:【立証責任】客観的な証拠があるか?
根拠:国税通則法、税務訴訟における立証責任の原則
税務調査において、「これは経費だ」と主張する際の立証責任(証拠を出す責任)は、税務署側ではなく「納税者側(あなた)」にあります。
「私は仕事だと思った」という主観は通用しません。第三者(調査官)が見て「なるほど、それは業務上必要ですね」と納得できるだけの「証拠(領収書、議事録、成果物、日報など)」を提示できなければ、否認されても文句は言えません。
第2章:【ケーススタディ】判例・通達に基づく○×判定ガイド
では、具体的な項目について、法的根拠に基づいた判定と「経費にするための条件」を見ていきましょう。
ケース1:スーツ代・靴・バッグ
判定:原則×(「業務専用」の立証が困難なため)
【法的根拠:東京地裁 平成4年12月24日判決】
多くの経営者が経費にしたがりますが、この判例は決定打です。裁判所は「スーツは個人の嗜好品であり、かつプライベートでも使用可能である」として、必要経費性を否定しました。
ポイントは「業務専用性の立証」です。「仕事でしか着ない」と主張しても、物理的に私用が可能であれば、客観的な区分が困難と判断されます。
税務署は、これを「役員個人の個人的な費用を会社が負担した」とみなし、「役員賞与(損金不算入)」として課税処分を下すのが通例です。
【例外的に認められるケース】
「制服」や「作業着」として、業務中のみ着用し、会社名やロゴが入っていて私用が不可能なものであれば、福利厚生費や消耗品費として認められます。
ケース2:カフェ代(スタバ・タリーズなど)
判定:条件付きで○(ただし根拠が必要)
【法的根拠:法人税基本通達9-7-15(家事関連費の区分)】
「取引先との打ち合わせ」であれば、会議費として全額経費になります(相手の名前の記録が必須)。
問題は「一人で仕事をした場合(ノマドワーク)」です。
これは「家事関連費」の領域に入ります。単なる休憩や食事代は「個人的費用」として否認されます。経費にするためには、以下の「合理的な業務必要性」を示すエビデンスが必須です。
- 事務所が工事中・清掃中で使用できなかった
- 外出先での緊急対応が必要だった
- 実際に作成した資料や日報がある
「カフェの方が集中できるから」という理由だけでは、否認されるリスクが高いことを覚えておきましょう。
ケース3:飲み代(キャバクラ・高級クラブ含む)
判定:相手がいれば○(ただし800万円の壁)
【法的根拠:租税特別措置法 第61条の4 第2項(中小法人の特例)】
取引先への接待であれば、キャバクラであろうと高級クラブであろうと、「接待交際費」として経費になります。
ただし、「いくらでも使える」わけではありません。中小法人(資本金1億円以下)の場合、以下のどちらかを選択する制限があります。
- 年間800万円まで全額損金算入(800万円を超えた分は経費にならない)
- 接待飲食費の50%を損金算入(租税特別措置法 第61条の4 第5項〜第7項)
多くの企業は①を選択します。つまり、「年間800万円」が実質的な経費の上限となります。これを超えた分は、会社のお金を使っても法人税の節税効果はありません。
【絶対NGなケース】
「社長一人で行った」「友人といった」は、事業関連性がないため即否認です。
また、「家族(役員)だけの食事」も、法人税基本通達9-7-13(役員給与の損金不算入)等により、原則として認められません。会議の実態があったとしても、身内だけの飲食は「私的な支出(役員賞与)」とみなされやすいのが実情です。
ケース4:高級外車(ベンツ・フェラーリ)
判定:○(ただし減価償却と事業供用割合に注意)
【法的根拠:法人税法第31条(減価償却資産)、基本通達7-1-1(耐用年数)】
税法上、「高級車だから経費に認めない」という規定はありません。事業に使っていれば、フェラーリでも経費になります。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 資産計上と減価償却:
3,000万円の車を買っても、その年に3,000万円が経費になるわけではありません。耐用年数(新車なら6年、4年落ち中古なら2年など)に応じて、数年かけて少しずつ経費にします。 - プライベート利用分の否認(通達9-7-15):
休日に家族旅行に使っている場合、その使用割合分は経費として認められません。税務調査では「運転日報(走行距離の記録)」の提出を求められ、事業利用率を厳密に計算されます。「100%事業用」と主張するなら、マイカーを別に持っているなどの客観的な事実が必要です。
ケース5:高級時計(ロレックスなど)
判定:原則×(現物給与認定のリスク大)
【法的根拠:法人税基本通達9-1-1(役員給与の範囲)、所得税法第28条】
「時間を知るため」なら安価な時計で十分であり、数百万円の時計は「個人の趣味・嗜好品」とみなされます。
「社長のステータスとして必要だ」という主張は、税務署には通用しません。会社が購入したとしても、それは会社の資産ではなく、社長個人への「現物給与(役員賞与)」として認定され、法人税(損金不算入)と所得税(給与課税)のダブルパンチを受けるリスクが極めて高いです。
第3章:税務調査で「否認」されないための証拠(エビデンス)の残し方
前述の通り、立証責任は納税者にあります。「これは経費だ!」と主張するなら、証拠を揃えなければなりません。
1. 領収書の裏に「5W1H」をメモする
これが最強かつ基本の対策です。特に交際費の領収書には、その場ですぐに以下の情報をメモしてください(措置法通達61の4(1)-23等の要件)。
- いつ(Date)
- どこで(Place)
- 誰と(Who):相手の会社名、氏名、関係性
- 人数:参加人数
- 何のために(Why):商談、接待、情報交換など
数年後の税務調査で「この日の飲み代は何ですか?」と聞かれた時、このメモがあるだけで調査官の追及は止まります。記憶に頼ってはいけません。
2. 議事録や報告書を残す
会議費や研修費を経費にする場合は、「議事録」や「研修レポート」を残してください。「実際に業務を行った」という客観的な成果物こそが、最強の証拠となります。
第4章:【個人事業主 vs 法人】経費の範囲と法的根拠の違い
法人成りをした経営者が驚くことの一つに、「経費の範囲が広がる」ことがあります。これは適用される法律や通達が異なるためです。
1. 日当(出張手当)
個人:実費のみ経費(所得税法)。
法人:「旅費規程」を作成すれば、実費に加えて「日当(例:1日3,000円)」を支給でき、全額経費になります(所得税基本通達9-5、法人税基本通達9-7-16)。しかも受け取った個人は非課税です。
2. 社宅家賃
個人:自宅の一部を仕事で使っている割合(按分)のみ経費(家事関連費)。
法人:「社宅契約」にすることで、家賃の50%〜90%を経費にできます(法人税基本通達9-2-5等)。これは個人事業主にはない強力な節税策です。
3. 生命保険料
個人:「生命保険料控除」として、最大で年12万円までしか所得から引けません。
法人:法人契約の保険は、解約返戻金の有無などにより、保険料の一部または全額を「損金(経費)」として計上できる場合があります(法基通9-3-5等)。
第5章:【調査のリアル】税務署はあなたの「SNS」を見ている
現代の税務調査において、調査官の強力な情報源となっているのが「SNS(Facebook, Instagram, Twitterなど)」です。
「家族旅行なう」は命取り
あなたが「出張費」として経費計上した日程で、Instagramに「家族でディズニーランド!最高!」と投稿していたらどうなるでしょうか?
調査官は、あなたの名前や会社名で検索し、投稿をチェックしています(公開情報収集)。そして調査当日、「社長、この日の出張ですが…SNSにはご家族と遊園地にいる写真が上がっていましたが?」と突きつけます。
これで「出張費」は全額否認されます。さらに、「事実を隠蔽・仮装した」として、最も重いペナルティである「重加算税(35%〜40%)」の対象になる可能性もあります。
【対策】
経費に関連する日程や内容について、SNSで矛盾するプライベートな投稿をしないこと。あるいは、アカウントを非公開にするのが賢明です。
第6章:【福利厚生】ジム・健康診断・社員旅行を「会社のお金」で落とす条件
社長個人が使うサービスを経費にするためには、「福利厚生費」の要件を満たす必要があります。ここのポイントは「全従業員平等」というキーワードです。
1. スポーツジム会費
原則×(役員のみはNG)
社長一人だけが使えるジムの会費は、個人の給与(賞与)とみなされます。経費にするためには、以下の条件が必要です。
- 法人契約であること
- 全従業員が利用できる規程になっていること
- 実際に従業員も利用していること(利用記録があること)
「チョコザップ」のような低価格ジムであっても、社長専用であれば経費にはなりません。
2. 健康診断・人間ドック
原則○(条件付き)
健康診断費用は、会社が負担することが一般的です。ただし、人間ドックのような高額な検査(10万円以上など)の場合、以下の要件が必要です。
- 全従業員を対象にしていること(年齢による区分はOK)
- 常識的な金額であること
- 会社が医療機関に直接支払うこと
社長だけが特別に高額なコースを受ける場合、その超過分は給与課税されるリスクがあります。
3. 社員旅行
原則○(厳格な要件あり)
社員旅行を「福利厚生費」として認めさせるには、以下の「3要件」を全て満たす必要があります(所得税基本通達36-30)。
- 旅行期間が4泊5日以内(海外なら現地滞在日数)
- 参加者が全従業員の50%以上
- 会社負担額が少額(実務上は1人10万円程度まで)
「役員だけでハワイ旅行」は100%否認されます。「会議をした」と主張しても、観光要素が強ければ交際費や給与になります。
第7章:【自宅兼事務所】家賃・光熱費を「経費」にする適正な按分比率
個人事業主や小規模法人の場合、自宅をオフィスにすることはよくあります。この「家事関連費」の按分計算は、税務調査で最も揉めるポイントの一つです。
1. 家賃の按分ロジック(面積比 vs 時間比)
税務署が最も納得しやすいのは「床面積の比率」です。
- 計算例:
自宅マンション(50㎡)のうち、1部屋(10㎡)を書斎として仕事専用に使っている。
→ 10㎡ ÷ 50㎡ = 20%を経費にする。
「時間比(24時間のうち8時間働くから33%)」という主張も理論上はあり得ますが、リビングや寝室などプライベート空間と混在している場合、否認されるリスクが高いです。「事業専用の空間があるか」が鍵となります。
2. 電気代・通信費の按分
こちらは「使用時間」や「コンセントの数」などで合理的に按分します。
- 電気代:業務時間や使用機器から算定(概ね20〜30%程度が一般的)。
- 通信費(ネット):仕事での利用頻度が高い場合、50%〜70%程度まで認められるケースもあります。
【鉄則】
根拠のない「一律50%」は危険です。税務調査で「なぜ50%なんですか?」と聞かれた時に、「業務時間は〇〇で、使用面積は〇〇だからです」と即答できるロジックを準備しておきましょう。
第8章:【税務調査対策】調査官に「否認」と言われた時の反論マニュアル
もし税務調査で「これは個人的な支出ですね」と指摘されたら、どう切り返せばよいのでしょうか。感情的にならず、法的根拠に基づいて反論しましょう。
反論1:「事業関連性」を具体的に説明する
調査官:「この飲み代はプライベートでしょう?」
あなた:「いいえ、これは〇〇株式会社の△△部長との商談です。当時、〇〇というプロジェクトが進行しており、その契約条件を詰めるための重要な場でした。その結果、翌月に〇〇万円の売上が発生しています(契約書を提示)。法人税法22条3項の『販売費』に該当します。」
「誰と、何のために」だけでなく、「その結果どうなったか(売上への貢献)」まで紐づけて説明できれば、調査官もぐうの音も出ません。
反論2:「福利厚生規定」を提示する
調査官:「この慶弔費は経費になりません。」
あなた:「当社には『慶弔見舞金規程』があり、全従業員に対して一律の基準で支給しています。今回の支出もその規程に基づいたものであり、社会通念上妥当な金額です。」
社内ルール(規程)に基づいた支出であることを証明できれば、恣意的な支出ではないという強力な証拠になります。
第9章:【FAQ】経費に関するよくある質問(18選)
最後に、経費についてよくある質問に、税理士の本音で回答します。
Q1. 領収書がないと経費になりませんか?レシートでもいいですか?
A. レシートの方がむしろ優秀です。
手書きの「上様」領収書よりも、日時・店名・明細が印字されたレシートの方が証拠能力は高いです。領収書を紛失した場合は、「出金伝票」に支払先や内容を記録することで経費にできる場合があります(消費税のインボイス対応には注意が必要)。
Q2. プライベートの買い物を会社のカードで払ってしまいました。どうすれば?
A. 「役員貸付金」として処理し、会社に返金してください。
経費にはせず、「会社が社長にお金を貸した」という処理にします。後日、個人口座から法人口座へ同額を振り込めば問題ありません。放置すると融資に悪影響が出るので注意してください。
Q3. 旅費規程の日当は、近場の外出でも出せますか?
A. 認められません。距離基準が必要です。
「片道100km以上」などの基準を設けるのが一般的です。近所の銀行回りなどで日当を出すと、実質的な給与とみなされ課税されます。
Q4. メガネやコンタクトレンズは経費になりますか?
A. 原則なりません。
生活必需品であり、業務専用とは言えないためです。ただし、業務でしか使わない特殊な保護メガネなどは消耗品として認められます。
Q5. 整体やマッサージ代は経費になりますか?
A. 基本的にNGです。
個人の体調管理は私的な費用です。ただし、従業員の福利厚生として社内にマッサージ師を呼び、全従業員が利用できる状態なら福利厚生費になります。
Q6. 祝儀や香典は領収書が出ませんが、どうすればいいですか?
A. 招待状や会葬礼状を保管し、出金伝票を書きます。
招待状などに「〇月〇日、〇〇祝儀、〇万円」とメモし、出金伝票を起票すれば経費として認められます。金額は社会通念上妥当な範囲内(1〜3万円程度)に限られます。
Q7. 高級腕時計は経費になりますか?
A. まず認められません。
「社長の身だしなみとして必要」と主張しても、個人の趣味性が高すぎるため否認されます。
Q8. 経営セーフティ共済(倒産防止共済)は全額経費ですか?
A. はい、全額経費になります。
年額240万円まで経費にでき、40ヶ月以上加入すれば解約手当金が100%戻ってくるため、非常に有効な節税策です(※解約後の再加入制限など、税制改正には注意が必要です)。
Q9. 英語のレッスン代は経費になりますか?
A. 海外取引など、業務上の必要性があればOKです。
単なる自己啓発ではNGですが、海外進出を控えているなど、会社の事業に直結するスキルアップであれば研修費として認められます。
Q10. 赤字でも経費を計上すべきですか?
A. はい、漏れなく計上すべきです。
赤字(欠損金)は10年間繰り越して、将来の黒字と相殺(節税)できます。黒字が出てから経費にするのではなく、赤字の時こそ正しく経費を計上し、将来の節税枠を貯めておくのが正解です。
Q11. 妻へのお小遣いや生活費は経費になりますか?
A. なりません。
生活費を渡す行為は「扶養義務の履行」であり、会社の事業とは無関係です。妻を役員にして、正当な労働対価として「役員報酬」を支払うことで経費化してください。
Q12. キャバクラでの接待はいくらまでOKですか?
A. 中小企業なら、上限は実質ありません(800万円枠内)。
資本金1億円以下の中小企業は、年間800万円までの交際費が全額経費になります。ただし、事業関連性(取引先の接待)が証明できることが絶対条件です。
Q13. 領収書の宛名が「上様」でも大丈夫ですか?
A. 消費税法上、原則NGです。
インボイス制度においては、宛名(買い手の氏名又は名称)の記載が必要です(小売業など簡易インボイスの場合は省略可)。基本的には正式な会社名を書いてもらう癖をつけてください。
Q14. 愛人手当は経費になりますか?
A. なりません。使途不明金として重課税されます。
愛人への手当は個人的な支出であり、事業関連性がありません。会社のお金で支払った場合、経費にならないだけでなく、「使途不明金」として制裁的な課税を受けるリスクがあります。
Q15. 商品券を買って配った場合は経費になりますか?
A. 配布リスト(受領書)がないと否認されます。
商品券は換金性が高いため、誰に渡したかのリストがないと、社長が個人的に使ったとみなされ、役員賞与として課税されるリスクが高いです。
Q16. 罰金(駐車違反など)は経費になりますか?
A. 会計上は費用ですが、税金計算上は経費になりません。
交通反則金などの罰科金は、ペナルティとしての性格を持つため、法人税法第55条により損金算入が禁止されています。
Q17. 政治家への寄付は経費になりますか?
A. 原則として経費になりません。
政治資金規正法により、会社(法人)から政治家「個人」への寄付は禁止されています。政党への寄付であれば、一定の枠内で寄付金として損金算入できる場合があります。
Q18. 決算賞与(社員へのボーナス)で利益を調整してもいいですか?
A. はい、有効な節税策です。
決算日までに「支給額を全社員に通知」し、「決算日から1ヶ月以内に支払う」ことで、その期の経費にできます(法人税法施行令72条)。未払い計上で節税できる数少ないテクニックです。
まとめ:経費は「作る」ものではなく「証明する」もの
経費の境界線は、法律(法人税法)と通達によってある程度決まっていますが、最終的には「事実認定」の問題になります。
「これは事業に必要だ」というあなた自身の信念と、それを客観的に説明できる「証拠(ロジックと書類)」が揃って初めて、その支出は経費になります。
「これは落ちるかな?」と迷ったら、まずは「事業関連性」があるかを自問自答し、メモを残す習慣をつけてください。
私たち荒川会計事務所では、単なる領収書の整理だけでなく、税務調査で指摘されないための「証拠の残し方」や、会社の成長に繋がる「戦略的な経費の使い方」までアドバイスしています。
不安な領収書があれば、ぜひ一度ご相談ください。プロの視点で「白黒」をはっきりさせます。
記事執筆監修者
荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。
会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。
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